伝統的工芸品とは、国が特に指定した工芸品のことで、製造工程の主要部分が手工業的であるか、伝統的な原材料、技法を用いているかなどの厳しい審査に合格しなければなりません。
岐阜提灯は、平成7年に通商産業大臣(現経済産業大臣)より伝統的工芸品に指定され、岐阜の名産品として一層の注目を集めています。
この伝統マークを使った伝統証紙が貼られている岐阜提灯は、産地組合等が実施する検査に合格した経済産業大臣指定伝統的工芸品です。
経済産業大臣指定伝統工芸品
岐阜提灯 春慶大輪菊
岐阜提灯は、美濃地方の豊富な竹と薄く質の高い美濃和紙を主原料に秋草や風景等を描いた繊細優美な火袋が特徴で、江戸時代より伝統的に受け継がれた高度な技法により、完成度の高さと美しさを併せ持った提灯として全国にその名を馳せています。
岐阜提灯には吊り下げ型の「御所提灯」、据え置き型の「大内行灯」、「廻転行灯」があり、お盆や納涼用に広く利用され、明かりを灯したときの優雅な風情と、その涼味溢れる季節感で、人々の心にやすらぎを与えてくれます。
岐阜提灯は、今も昔と変わらない技法を使い、数多くの工程を経て作られています。
まず、組み上げた張り型に、極めて細いヒゴを螺旋状に巻いていきます。 そして、一流の日本画家に下絵の揮毫を依頼し、絵柄を摺り込んだ和紙を重ね目が多くならないよう張りつけていきます。
細心の注意と時間のいる手仕事です。
その後、補筆や絵付けを経て、ようやく一張りの岐阜提灯がうまれるのです。
いくつもの工程を丁寧に、心をこめて仕上げていくことで、岐阜提灯には心安らぐ優雅なぬくもりが宿るのです。
経済産業大臣指定伝統工芸品
岐阜提灯 本春慶小
江戸時代を代表する絵画芸術、版画。
明和、安永の頃にはその版画を灯籠に張って装飾的な鑑賞灯に応用されるようになりました。
それに縁を得て、明治に入るとその版画を岐阜提灯に用いる「摺込絵」の技術が考案されます。
火袋の意匠を東京の省亭・玉章・是真、京都の寛斎・竹堂・玉堂等一流画伯に下絵の揮毫を依頼し、涼味溢れる描写の再現に努力を重ねてきました。
輪郭を和紙に木版で摺り、伊勢白子の型紙で彩色を摺り込み、張り上げた火袋に補筆することで、肉筆画にも劣らない鮮麗さと版画の持ち味を活かした画期的な技法として高く評価され、現在に受け継がれています。
経済産業大臣指定伝統工芸品
岐阜提灯 本春慶2号
江戸時代の和歌に詠まれたように、岐阜提灯には彩色優美な風情のある絵が描かれています。
古くから日本人は自然と共に生き、その美しさを見いだし、生活の中に取り入れてきました。
自然や人に対する優しさや想いが岐阜提灯には描かれているのです。
江戸の頃より受け継がれた、無地で張り上げた火袋に直接描く「手描き絵」。
岐阜提灯絵師が一筆一筆丹精を込めて絵付けした風雅な作品を、是非手にとってご覧ください。