張は、まず張型を組み、カガミ(コマともいう)を上下にはめて固定します。張型は提灯の大きさによって6、8、10枚型などの違いがあり、主に提灯大きさに対応します。次に張型にあけられた孔にヒゴを通して留め、張型に刻まれた溝に沿ってヒゴを螺旋状に巻いていきます。途中、ヒゴが終わると糸で次のヒゴを結び最後に再び張型の孔にヒゴを留めます。なお、ヒゴを巻く数(目数)により、提灯の張の部分でのランクがほぼ決まり、上物ほど目が細かくなり、目数が多いほどヒゴも細くなります。
昭和初期の張り作業風景
ヒゴ巻きが終わると糸を上の張輪から下に向けてかけます。事前に上の張輪には糸が留められており、これを張型の背の部分にあわせてはめ込み、鈎針を使用して、ヒゴを糸にかけます。この時提灯の上下の肩部分にのみ、糸をヒゴに巻き、途中は流すのみとします。これを糸かけとよび、この糸は提灯の伸びすぎを防ぐとともに、紙の破損を防ぐためのものです。
次に、上下の張輪から4~5本のヒゴの部分に薄紙を貼り付けます。これを腰張りといい、この部分が最も破損しやすく、糸かけと同様に更なる補強をするための工程です。その後精製した小麦粉で作った糊をノリバケでヒゴに叩くようにしてムラなくつけます。この時、かけた糸にゆがみが生じるため、ホセと呼ばれる竹ベラで糸をきちんと張型の背に戻します。
糸を修正した後に紙をのせナデバケでなでて張ります。糊の付けすぎは、ヒゴから糊があふれて仕上がりが見苦しく、逆に少ないと紙がはがれやすくなります。また、強くハケでなでると、紙がヒゴに巻き込み、火袋の凹凸が大きくなるため、後の絵付作業を難しくします。ノリバケ、ナデバケの手加減は、張師の熟練の勘に委ねられます。
紙を張った後、余分な紙は剃刀で切り落とします。ここでも細心の注意が払われ、なるべく継ぎ目が目立たないように間隔を狭く切ることが重要です。このようにして1間が終わると次の1間は飛ばし、1間おきに4間(8枚型の場合)を張ります。これを下張といい、残りの4間を上張といいます。この方法は絵柄を合わせやすくためのものです。そして、残りの上張りを絵柄が合うように注意しながら張り、余分な紙を約1㎜という極細の継ぎ目を残して切り落とします。
乾燥後はカガミを外し、張型を抜きます。胴が太く口の狭い岐阜提灯は、そのままでは張型が口から抜けないため、張型の内側が半円に切り取られています。張型を抜いた火袋はヘラで折り目を丁寧につけてたたみ、張部分の工程が終了です。